上妻英夫(こうづまひでお)

経済ジャーナリスト 「ビジネスマン、経営者の応援歌」をテーマに新聞から専門誌まで幅広く執筆。効果的な販売戦略や販促策等、独自の視点、分析力から選び抜いた本物の情報だけを経営者に提示。全国の経営者から絶大な信頼と「社長の知恵袋」として活躍。書籍、電子書籍合わせて40冊を発行。

【リピートの極意】シリーズ 3

【リピートの極意】シリーズ 3

▼契約制・定期制・会員制を導入せよ

 リピート客づくりを進めたり、リピーターを獲得する上で最もシステム的なやり方が「制度を創る」ことだ。会員制度をつくってく、一般ユーザーを入会させたり、一年契約、三年契約など、一定期間の取引を相手に承認してもらう契約制もある。タクシーなどのサービス業であれば、定期をつくって繰り返し利用を促す定期制の導入もある。

 制度をつくることは、浮気しがちな顧客の心を見越し、リピート利用を約束させる手法ともいえる。消費者の心理は移り気だ。いま、気に入っている商品やサービスであっても、いつかは他社のほうがよくなって浮気をしてしまう。そんな時、会員制度や契約制度などでつながっていれば、「他社の商品に心が動くが、会員特典があるので、今回も同じ会社の商品を買おう」ということになる。

 特典の話が出たが、制度をつくるうえで大切なことは、顧客にとってどれだけ魅力的な特典がをつけられるとかいうことである。会員制なら割引や優遇などの非会員よりも“得”である内容を盛り込むわけだが、問題はその度合いである。中途半端な割引、優遇であっても、わざわざ入会することもないし、入会したとしても、繰り返し利用(または購入)したいとは思わない。

 理想的な形は「ここまでしてくれるなら、制度を利用しなければ絶対に損だ」と、顧客に思わせるような特典をつくることだ。会員になるだけでなく、利用すればするほど

得をするようなシステムならば。リピート利用を促せることは間違いない。そのためには、会員と非会員の割引率を明らかに、違う数字にするなど仕掛けが必要だ。

 この「圧倒的な厚遇」が常連客の心をくすぐる。割引率の数字だけでなく、VIP会員には、クレジットカードのようにカードの色を変えたり、会員にしか教えない「とっておきの情報」流すというやり方である。いわば、一種のステイタス。特別扱いされることで顧客は気分がよくなり、利用頻度や購入頻度も増える。

 企業や店舗側から、制度利用者を絞り込むケースもある。誰でも利用できる制度ではなく、「年間利用額が100万円以上」とか、「毎年利用する顧客でなおかつ一〇年以上たっている方」など、“優良顧客”のみにターゲットを絞り、アプローチするわけだ。もともと利用頻度や利用金額の高い顧客であるが、制度を活用することで、さらに頻度や金額のアップが期待できる。

 企業や店舗は、できるだけ顧客にすり寄っていかなければ生き残っていけない。また、ネットが普及し、ちょっとした噂で人の心が動くなど、消費者心理が読みにくい時代でもある。だからこそ、制度によって顧客を囲い込むという手法が生きてくる。企業多店舗が主導権を握り、繰り返し約束させれば、常に顧客の動向をきにする必要はない。そういう意味で、制度の構築は時代にマッチしたやり方である。

 

▼先進の技術・ITを活用してリピート倍増

 リピートを生み出す要因は“顧客満足度”を高めることにある。お客は対価に対して予想以上の満足感を得ることで、その企業や商品、サービスに対して、「また利用しよう」という気持ちになる。そのためには、従来の手法ではなく、新たな手法を活用した顧客へのアプローチが求められる。では、その新たな手法となるものは何か。

 それは最先端の技術やITシステムを導入することで、顧客管理を効果的に行うことができ、マーケティングやアフターサービスに活かすことが可能になったりとメリットは数多くある。また、IT化によって人件費を抑えることもでき、結果として価格帯を抑えたサービスの提供を可能にし、価格面での差別化を可能にすることもある。

 これらを上手に活用することで、サービスの内容そのものは既存のものであっても、そこに新しい価値を生み出し、リピートを創り出す要因になる。これは商品の販売においても同じことがいえる。

技術やITシステムなどの導入がリピートを生み出すという法則は、飲食店などのケースにおいても同じことがいえる。飲食店の場合、店が顧客に与える満足感は提供するメニューの味、つまり、美味しさであることは言うまでもない。だが、美味しい料理を提供するだけであれば、競合店と差別化を図り、集客につなげていくことは難しい。味覚は嗜好の範疇であるため、実際のところは、価格帯やサービス面といった要素が味の満足感を高めていく。つまり、美味しい料理を提供することは前提として、それをどのように提供するのか、どのように食べてもらうかといって店が満足感を与えられるかどうかの基準点になる。

 こんな店があったらどういう印象を持つか。店に入り、ICチップのついたショップカードをかざすと、店員が自分の名前を呼んで挨拶し、「〇〇様、いらっやいませ」といって案内してくれる。そして、「前回、お越しいただいてから2か月ほどたっていますが、その後、いかがお過ごしですか」と聞かれる。おそらく、お客は料理を食べる前にすでに何とも言えない満足感を得ることだろう。

 従来はこうした作業は店員の記憶やメモによって行われていた。しかし、IT技術により、こうしたシステム化することができるようになった。デジタル化が進んでいるのだ。しかし、デジタル化以上にアナログも大切である。「表はアナログ、裏はデジタル」というじょずに使い分けることがリピートの仕掛け術に必要である。

 

▽【売り方・売る場所・売る相手を変えてみる】

 商品に自信を持ち、よい商品なのに売れない。サービスは一流なのにお客が来ない。大半がこんな悩みを持ちながら、解決策を見いだせないまま現状維持を続けている。

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